回復期リハビリテーション病棟に勤めている僕が家屋評価のポイントについて紹介をします。
回復期リハビリテーション病棟では退院前指導として家屋評価を実施します。
その際に必要なポイントは以下の通りです。
- 自宅内での患者様の動きの確認「導線、生活動作など」
- 家屋状況の確認「段差、手すり、ドアの形など」
- 家屋周辺の状況の確認「スーパー、コンビニ、駅、バス停など」
- 置いてあるものや配置から本人様・家族様の生活歴、価値観を知る
- 生活様式の変更・介護保険サービス・福祉用具の提案をどのようにするか
- 必要になる訓練プログラムはあるか
本人様と家族様の生活が成り立つように移動面、生活動作(食事、排泄、更衣など)、趣味、仕事など多様な面から考察し、生活様式の変更、サービス・福祉用具の提案を行います。
退院前指導・家屋評価とは
回復期リハビリテーション病棟に入院している患者様の自宅に伺う。
目的としては以下の通りです。
- 自宅退院可能と思われる患者様の自宅生活が行えるようする
- 必要な家屋改修点や介護保険サービスの提案
- 退院までの入院期間で自宅生活により合わせた訓練を実施
参加者は患者様、家族様、リハビリスタッフ、介護保険が適応される場合はケアマネジャー、福祉用具業社で実施をします。
病院の屋外での訓練時間は単位申請が3単位(60分以内)と決められています。この時間内に家屋評価は実施します。
確認をする点としては
- 自宅内での患者様の動きの確認「導線、生活動作など」
- 家屋状況の確認「段差、手すり、ドアの形など」
- 家屋周辺の状況の確認「スーパー、コンビニ、駅、バス停など」
この3点を踏まえた上で生活様式の変更、介護保険サービス、福祉用具の提案を行います。
評価ポイント
自宅内での患者様の動きの確認
患者様が自宅で移動をする場所の動作確認を行います。
具体的には「玄関、上がり框、トイレ、リビング、仏間、寝室、階段、お風呂など」が考えられます。
このときの動作を見るポイントとしては
- 転倒リスクはないか(本人様の身体能力・認知能力によるものか、段差や手すりの有無など環境によるものか)
- 導線上にどのようなものがあるか、障害物になるのか、動きを助けるものになるのか(手すり・段差・扉など)
- 歩行補助具や車いすの操作は適切か
玄関の上がり框を上がる時の例だけでも以下のように患者様によって行動パターンが変わります。
- 座って靴を脱ぐのか
- 立って靴を脱ぐのか
- 手すりや靴おきに手をつくのか
- フリーハンドで脱ぐのか
同じ動作名でも人によってやり方が違うことは頭に入れておきましょう。
家屋状況、家屋周辺の状況の確認
家屋状況
家屋状況は本人様が移動する範囲の「段差、手すり、扉、台所、トイレなど」の形状や大きさなどを確認します。
評価するポイントの一例です。
- 段差はどのくらいの高さか
- 段差周囲に掴むものはあるか
- 扉は開き戸・引き戸どちらか、扉は重いか・軽いか
- 浴槽は半埋め込み式、埋め込み式、ユニットバスなのか、手すりはつけれる壁材か
- コンロは電気かガスか
- トイレは和式か洋式か
このときに車椅子が入るのか、手すりがつけられるのか、家屋改修が可能なのかを検討します。福祉用具業社がいると相談ができるので、できたら同行していただけると良いです。
家屋周辺の状況
患者様が買い物や外食、趣味活動などで外出する機会がある場合は実施します。3単位以内での実施が難しい場合は他の方法で補います。
評価するポイントの一例は以下の通りです。
- 歩道に出るまでに段差があるかないか
- 周辺の道路の交通量は、信号はあるのか
- 駅やバス停は階段・エレベーター・エスカレーターがあるのか
- スーパーやコンビニはバリアフリーなのか
3単位以内で実施できない場合は以下の方法で環境の把握をします。
- 家屋評価で移動途中に患者様宅周辺の環境を確認する
- グーグルマップやグーグルアースなどのネットマップを活用する
この2つの方法を用いることで現地に赴くことできなくても患者様宅周辺の環境や導線を確認することができます。
自宅にあるものから生活歴、価値観を知る
患者様宅に置いてあるものから生活歴、価値観を知ることができます。
生活歴、価値観を知ることで生活様式や行動パターンに影響を与えているため、知ることは重要です。
以下はその一例です。
- ものが綺麗に整頓されている→掃除をしている。綺麗にしておきたいという価値観がある可能性
- 写真が飾っている→写真の内容によって患者様の生活歴を知ることができる
- 賞状が飾ってある→仕事や趣味に誇りを持っている。
生活様式の変更、環境調節(サービス・用具の提案)
患者様の動き、家屋状況、患者様の価値観を総合的に捉えた上で、生活様式の変更と環境調節を提案していきます。
生活様式の変更
患者様の生活に危険な部分がある場合は提案をします。
経験上多いのが患者様が和式生活(床上生活)から洋式生活に変更していただく場合です。
- 和式生活→布団、ご飯を正座で食べる、和式便所
- 洋式生活→ベット、椅子に座ってご飯を食べる、洋式便所
このような形で生活様式を変更していただきますが、患者様が同意をしているか確認をしっかりと取りましょう。
他の例としては「見守るひとがいるときにお風呂にはいる」「外に出るときには歩行器を使用する」「1階に寝室を移す」などあります。
同意できていないと生活様式の変更をせずに生活をしており、転倒の危険をかかえたまま生活している可能性があります。
環境調節(サービス・福祉用具の提案)
生活様式の変更のみでは対応できない場合に介護保険サービスや福祉用具の提案を実施します。
介護保険サービス
- できなくなってしまった家事動作の代行、自宅での入浴補助→訪問介護
- 服薬管理、日々の医療的管理が必要→訪問看護
- 自宅での入浴が難しい、日中の食事→通所介護
- など
簡単ではありますが上記のような提案をしていきます。
福祉用具
- 風呂の椅子が小さい→シャワーチェアの購入
- 屋外歩行が不安定→歩行補助具のレンタルor購入
- 車椅子で玄関に入る→スロープのレンタル
- など
家屋改修
- 玄関、トイレ、お風呂に手すりの設置
- 段差昇降機の設置
- トイレやお風呂のリフォーム
- など
必要になる訓練プログラムの立案
生活様式の変更、環境調節をすると今までの生活と変化してしまうため、新たな技能を身につける必要があります。
家屋評価後に自宅環境で生活できるように再び訓練を実施します。
例を挙げると以下のような訓練を実施していきます。
- 手すりを使った状態での段差昇降
- 歩行器や杖のしまい方
- お風呂への入り方
- 仏壇椅子への座り方
まとめ
回復期リハビリテーション病棟に勤めている僕が家屋評価のポイントについて紹介をしました。
回復期リハビリテーション病棟では退院前指導として家屋評価を実施します。
その際に必要なポイントは以下の通りです。
- 自宅内での患者様の動きの確認「導線、生活動作など」
- 家屋状況の確認「段差、手すり、ドアの形など」
- 家屋周辺の状況の確認「スーパー、コンビニ、駅、バス停など」
- 置いてあるものや配置から本人様・家族様の生活歴、価値観を知る
- 生活様式の変更・介護保険サービス・福祉用具の提案をどのようにするか
- 必要になる訓練プログラムはあるか
本人様と家族様の生活が成り立つように移動面、生活動作(食事、排泄、更衣など)、趣味、仕事など多様な面から考察し、生活様式の変更、サービス・福祉用具の提案を行いましょう。
コメント