脳卒中、頭部外傷などで生じる高次脳機能障害として注意障害があります。
注意障害を理解するためのモデルとして「Pasnerによる実行的注意ネットワーク仮説」「方向性注意の大脳半球間機能差モデル」「Kinsabouraneによる半側空間無視の注意障害説」などあります。
回復期リハビリテーション病棟に勤めているため、脳損傷者のリハビリテーションを実施する機会が多くあります。そのため、これらのモデルに付いて整理してみました。
モデルがあると障害が理解がしやすくなることもあるので、知っておくと良いと思います。
注意とは
注意とは「集中すること、意識をむけること」など辞書では書かれています。
定義
Jamesは以下のように定義しています。
Jamesは意識の焦点化と集中、すなわち選択的注意について次のように記述している。「注意というものが何であるか誰でも知っている。それは同時に存在するように見えるいくつかの対象や一連の思考から、1つだけを心がはっきりと手に入れることである」
リハビリテーションのための認知神経科学入門、森岡周、p37より
様々な情報に溢れている世界に対して、自分に必要な情報を選択して取り入れることができる機能のことです。
例:机の上に置いてあるもの様々のものがあるが、お茶が飲みたいのでコップに注意が向いて手を伸ばして飲む。
能動的注意、受動的注意
能動的注意:意識的な働きによって情報処理に影響を及ぼす。
受動的注意:無意識的な働きのよって情報処理に影響を及ぼす。
注意の前方システム、後方システム
注意の後方システム
注意の後方システムは主に視覚的に関する注意を司っています。
視覚的方向定位システム(posterior attention system)といいます。
主な機能としては以下の通りです。
- 視覚的な注意の方向づけ
- 現在の注意の焦点からの解放
- 合図された位置への注意の転換
- 目標の増幅
方向定位システムは「頭頂葉後部」「上丘」「視床枕」で処理されている。
注意の前方システム
細心の注意を払わなければならないときに賦活する注意。
実行的注意システム(anterior attention system)とも言われる。
主な機能は以下の通りです。
- 他より重要な情報への反応(注意の転換)
- 2つ以上の刺激に同時に注意を向ける(注意の分配)
- 随意的に注意の焦点を当てる
- 刺激への反射的な反応を抑える
- 外界からの干渉刺激の抑制
「帯状回」で主に処理されている。
方向性注意のモデルと半側空間無視
方向性注意の大脳半球間機能差モデル
視覚性の注意は左大脳半球と右大脳半球で共同して外界をカバーしている。
- 左大脳半球:右空間>左空間 右空間に対する方向性注意が強い、左空間に対する方向性注意が弱い。空間分布が狭い。
- 右大脳半球:右空間<左空間 右空間に対する方向性注意が弱い、左空間に対する方向性注意が強い。空間分布が広い。右空間もカバーしている。
このため、右大脳半球に損傷が起こると、左空間へ注意を向けることが困難になります。
そのため、左空間に対する反応の遅れ・見つけられないなど、半側空間無視が起こる。
Kinsabouraneによる半側空間無視の注意障害説
正常な状態:左右半球から対側に向く注意のベクトルが存在している。左半球からでる右側へのベクトルが大きい。
右半球に損傷:右半球から左半球への抑制がなくなる、左半球から右半球への抑制が絶えずある状態。左空間への注意のベクトルが向かない状態→左半側空間無視になる。
左半球に損傷:右半球から抑制を受け、左半球から右半球への抑制がない。左への注意のベクトルが大きくなるが、ベクトルが弱いためバランスが崩れることが少ない。空間無視の症状が出づらい。
まとめ
注意機能には以下のような特徴があります。
これらを理解してクライエントに起きている症状を理解して作業が行えるようにしていきましょう。
- 注意には後方(視覚的方向定位システム)・前方(実行的注意システ)システムがある。
- その中には注意の転換・分配・持続などがある。
- 人の注意機能は左空間に対するベクトルが弱い。右空間に対するベクトルが強い。
- 右半球を損傷すると左半側空間無視が出現しやすい。
今回はこちらの本を参考にブログを書きました。
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