佐藤剛監訳「作業科学ー作業的存在としての人間の研究ー」の14章作業の自己永続性について重要と思われる部分を抜き出しまとめました。
この章の要点としては以下の通りです。
- 作業維持:作業と直接、間接に関連する作業に持続的に携わること
- 作業維持には「プライミング、認知的構え、個人的努力、社会的動機づけ物理的環境要因など」様々な要因が関わっている
- 作業療法実践では作業維持という考え方を用いることで、自己認識の変化、適応を促すなど様々な効果を得ることができる
個人的には回復期リハビリテーション病棟に勤めているため、休止していた作業を再開し維持するために必要な視点です。
作業の反復
特定の作業への個人の参加が続けられるという現象を指す。
反復の程度に応じて、個人の作業選択の連続パターンはそれほど多様ではなくなる。
作業参加の全体的な影響は連続する作業選択が相互に比較的独立しているような場合よりも強められる傾向にある。
特定の作業の反復は個人のパーソナリティと達成に良くも悪くも強力な影響を作り出す可能性がある。
反復という現象は我々の存在の骨格を極めて大きく決定する重要なもの。
作業維持
以前に携わった問題の作業と直接、間接に関連する作業に持続的に携わることを指す。
作業を維持することはどんなことがあろうと末永く我々の生活に重大な結果をもたらす可能性がある。
作業維持が生じる四つのレベル
- 単一の機会になされる特定の作業遂行
- 異なる機会になされる特殊な作業
- 仕事・休息・余暇といった広範な作業カテゴリー
- 活動一般
作業維持と習慣とフローの違い
作業維持
- 開始と継続という点で特定のもの
- 積極的で意思的な選択過程から発する
習慣
- 一般的なもの ex.貧乏揺すり、喫煙、制限速度を守るなど
- 相対的に自動的で非随意的、無意識的行為
フロー
- 特定の経験の質
- 作業の難易度と挑戦感が程よいと感じる
- 時を忘れるくらい、完全に集中して対象に入り込んでいる精神的な状態
- 作業維持に影響を及ぼしうる要因の一つ
作業維持という概念に対する理論的整合性
認知的および知覚的要因
プライミング
- 作業の参加が先々、同一、類似の作業の鍵となる側面へと関心を向かせるような考えを刺激する。ということをプラインミング効果が示唆している
- プライミングとは関連性のあることを無意識に処理すること
認知的構え効果
- 特定の作業の持続は現在なされつつある作業選択のストラテジーがもたらす認知的な盲のために他の作業を除外することを促進することもある
- 特定の作業に認知が集中する
自己認識
- 過去の作業を映し出す自己概念と自分の将来の作業とを一致させようとするときに生じる
- 自分の自己概念と矛盾することないやり方で行為をする
評価の高まり
- ある作業を広げる新たな事実の学習からもたらされる。
- 始めはつまらなくてもルールを知ったり勉強することで楽しみ方を知る
情緒的・動機的要因
個人的努力
- 同一の作業への将来的な参加の可能性を高める。
- 特定の作業を反復して携わることによって経験を蓄え、特殊な能力領域を獲得し、作業選択における首尾一貫性のなさからくる努力の浪費を回避する。
動機の機能的自律性
- 特定の作業は一般に複合的なニードを満たすことができるため、以前の作業遂行の結果としてそれに継続的に携わる。
- 新たな動機を発見するとその作業は維持の対象になることがある
社会的動機づけ
- 一緒に参加する人の態度がその作業参加の継続を支える。
- 大勢に従うべしといる圧力や他の社会的影響の過程がそうした作業の維持を引き起こすことがある。
物理的状況の変化
作業に携わるために必要な物理的なものを獲得すると同じ作業への参加をうながすことがある。
地理的。好みの作業に関わることを促進する生活環境を選ぶ。
身体的変化、加齢、病気。
作業維持と参加の強さとの関係
基本的な遂行の強さを高めることと結びつく。
維持と強さの相関はフローの実現とは独立して生じる。
強さは外的強化の結果として高まる可能性がある。心理的な関わりでなされる。
フローの実現に応じて集中、参加の楽しみも高まる。
作業維持を促進する理論的要因の要約
作業の停止
- 将来的な予測へと導く楽しくない経験 ex.失望、フラストレーション、気後れ
- 参加の継続のために必要な資源や物理的アクセスの不足
- 心理的に満足することがなくなる ex.退屈、成熟性の認識
- 外的に制限された課題や活動の完成
- 最初の仕事よりも魅力的な、あるいは重要な作業の出現
- 身体的な無能力あるいは死
作業維持の予備的研究
作業維持の重要性を裏付け、作業へ参加によって引き出された認知的および情緒的・動機的変化がこの効果に寄与する試験的な証拠。
作業療法に対する作業維持の関連性
- 患者が成長を促す活動に継続して携わるのならセラピーの結果はより長く続き利益をもたらしうる。
- 作業が維持されるとセラピーという直接的文脈以外でも自発的にその作業を開始するようになる。
- 自己認識の変化、評価のたかまり、社会的動機の高まりといった作業維持を引き起こす特徴がセラピストによって促進されれば患者は利益をより得ることができる。
- 患者の作業選択にみられる首尾一貫性のない異常適応パターンと戦う上で役立つこともある。
まとめ
佐藤剛監訳「作業科学ー作業的存在としての人間の研究ー」の14章作業の自己永続性について重要と思われる部分を抜き出しまとめました。
この章の要点としては以下の通りです。
- 作業維持:作業と直接、間接に関連する作業に持続的に携わること
- 作業維持には「プライミング、認知的構え、個人的努力、社会的動機づけ物理的環境要因など」様々な要因が関わっている
- 作業療法実践では作業維持という考え方を用いることで、自己認識の変化、適応を促すなど様々な効果を得ることができる
個人的には回復期リハビリテーション病棟に勤めているため、休止していた作業を再開し維持するために必要な視点です。
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