脳、心、意味【作業科学・神経細胞集団選択理論・Ruth Zemke】

作業療法
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「作業科学 作業的存在としての人間の研究」より「15脳、心、意味」Ruth Zemke著の重要と思われる部分を抜き出しまとめました。

僕が感じ取った重要な点としては以下の通りです。

  • 作業療法士は包括的な視点でクライエントを見る必要がある
  • 心身二元論・包括的視点どちらの視点も必要
  • 神経細胞集団選択理論では活動・環境の相互作用によって人間の脳内が常に変化していることを示している

クライエントの一部を見るのではなく、包括的な視点で捉えて、活動・環境と関わることで人間の行動が変化していくことを重要視していたのではと思います。

詳しい本文に関しては「作業科学 作業的存在としての人間の研究」を参考にしてください。

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本文の重要部分の抜き出し

はじめに

二元論ではなく、作業的存在としての人間は複雑性を支持する科学的な知識を求める必要がある。

心身二元論

プラトンは、実在と現象、観念と客体、理性と感覚認識、魂と身体といった二元論を示した。

このペアのうち最初に挙げられたものが二番目のものに比べて現実性や価値において優れている。

精神と物質を二分すること、哲学や科学では一般的な考えとしてありふれている。魂と身体を二分することとして始まっている。

心の世界と身体の世界は平行した存在として見なされている。身体に適応される物理法則が心に対しても影響を強いる。意欲と自由意志についての観念はこの視点で扱うことは難しい。

科学:二元論的安定性か包括的適応性か

デカルトの哲学から発展した伝統的な物理科学は物質や物理的事柄が研究対象。

精神は哲学、魂は神学が扱う領域という傾向。

物理科学

  • 安定した世界
  • 一般法則をもつ部分的な研究
  • 分類学

生物学

  • 生体の全体像
  • 折衷主義的な科学
  • 下位システムや構造の理解
  • 相互に作用する構成因子と下位システムレベルの統合から知識を創造しようとした
  • ダーウィンの生物的概念は変化と適応というダイナミックな視点を必要とした
  • 精神と身体の融合に潜在的な可能性があるものとして科学にアプローチし、従来の二次論を排除している
  • Grerald Edelmanの神経細胞手段的選択理論はそのような理論の一つ

神経細胞集団選択理論

生物進化選択理論の一般的必要条件

  • 変化をもたらす多様化の原因
  • 環境と効果的に交流する手段
  • より大きな適応の価値を持った個体数の変化に対する一定期間にわたる増幅手段

神経細胞集団選択理論

  • 神経接合の多様化は胎生期の発達で生じ、シナプスの効率における経験的な多様性はその後も継続する
  • 行動は環境との交流およびそれと並行した神経による環境のサンプリングにつながる。その環境は適応的な相互作用をする神経集団シナプスの特異的な増幅を伴う
  • 記憶は発達と経験によって選択された特有のパターンを維持する。

Edelmanの理論

  • 発達を通してその種に固有でありながら豊富な個体差を示す神経細胞の構造が形成される。
  • 脳細胞が個体ごとに多様化したのは適宜に起こるダイナミックな発達上の選択の過程の結果。
  • あらかじめ細く決められた解剖学的形態の結果ではない。

  • 行動している間に神経系の刺激の結果として変化のための選択が生じる。
  • 行動によってシナプス結合やシナプス伝達は軸索性や樹状突起の発生によって強化され、神経伝達物質の有効性によって変化する。
  • 個人の経歴は変化を増し、他人とは異なる人間を作りながら、脳の構造の機能的な効率に大きな影響力もっている。

  • 環境と個人とを関連づける行為を通してレパートリーは局所的な皮質の地図に整理される。
  • 局地的な地図は再入力信号と呼ばれる接続によって並行しつつ双方向に結合され機能的な分散システムとなる。
  • 多数の局在地図が同時に外界からの信号を受け取るとそれらの局在地図の再入力の結合により信号の共有が認識される。
  • 皮質の神経地図は再入力回路によって接続されており、他の皮質の地図から刺激を受けている。
  • このような神経処理が基本的な認知過程(知覚、記憶、学習など)、より高次な機能、概念形成といった機能的グルーピングを形成する。

  • 分類は感覚運動活動の結果として局所的な神経地図の複雑な交流によって起きる、包括的マッピング。
  • 包括的マッピング:再入力可能な接続になっている多くの局所的な地図を内包したダイナミックな皮質構造。
  • Reedの活動理論:感覚システムや運動システムというものは存在せず、人間が環境の一部として活動する際に感覚運動活動システムというものだけが存在する。

記憶、概念、そして学習

記憶

  • 感覚運動の遂行単位が包括的マッピングによって密接に結びつけられたもの。
  • 行動と環境の変化が常に迅速な再分類を促しているためマッピングは変化する。
  • 時間的順序づけは現状の出来事が主。現在進行中の活動の各部分の時間的連動を維持する。

※プライミングのことも言っている

概念

  • 概念形成は特殊な結合性に依存している。脳は自らの活動と包括的なマッピングをタイプ別に分類する。動きに対する概念、楽しい状態に関連した概念など。
  • 概念区分に関する脳領域は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、帯回。
  • Edelmanは世界を生データが人間システムに取り込まれ、人間がデータ処理をした結果が情報となるような、ラベルのついていない場所と見ている。

学習

  • 関連した分類や進化的価値、快楽思考、達成欲、食欲など、種に固有の機能を含んでいる。
  • 大脳皮質、海馬や基底核、皮質下、大脳辺縁系の構造と関連が必要。
  • 価値は進化上の適応機能を支えている。意識的に制御された決定のためのにシナプスの変化に応じて修正される。
  • 神経システムは人間の内部的は価値と企図に従った外部の出来事に対して相対的重要性を決定することができる。目標と目的的な活動の選択に影響を与える。
  • 学習は生体の価値を満足させる適応反応をもたらすために分類と価値を結びつける。

意識

  1. 分類や記憶を導く神経細胞集団選択
  2. 自分と自分以外のものとの間での感覚運動の区別
  3. 適応反応のための進化上の成果
  4. 継続した出来事を生み出す神経システム
  5. 記憶のために3と4が相互作用すること
  6. 記憶システムと現在の経験を結びながら再入力ができる結合状態

Edelmanによれば「脳の以前の記憶と現在の活動は相互に作用し合い、記憶された現在という形での基本的な意識を生み出す」

人間はブローカー、ウェルニッケ領域の進化によって象徴的な分類のための手段が出現した。過去、現在、未来の行動を区別する必要がある企画力が高まった。

時間から独立したモデルをもって発達した形の高度な意識が可能となった。

  • 高度な意識:初期は「自己」と「非自己」に分類できる能力→社会的文脈における言語によって意識的な自己モデルの発達を促す
  • 言語システム:社会的場面での情緒的・観察的学習によって発達。発語と認知の特殊システムという概念に関係する。

会話では覚えている概念や変化した概念の象徴的な意味を浮かび上がらせて新たな価値観に向けて記号的に結合し意味を豊かにする。

高度な意識や言語によって過去と未来のモデル構築ができる。現在の行動に流れを過去(原因)と未来(結果)のモデルの内容と同時に比較することが可能。

現在の活動の結果に生じる時間的長さの感覚は感覚入力や注意覚醒の状態、活動の性質によって変更可能。

作業科学:心と物質の包括論

意識は個々に起こるプロセス。経験的で変化を伴い、行動に関連している。

物質の一部ではなく、物質を生物学的に整えたものでもない。物質は心に先行して存在し、死に際しては個人の意識の過程や思考が不可能になるという意味で個人の心は終息する運命にある。

Edelmanは意識の起源を物質と進化と脳の発達の関係に見る見解によって「個人は世界における自分の場をはるかにはっきりとみることができるようになるだろう。自分がどのように世界から来たのか、意識とコミュニケーションという特権を束の間享受しながら同胞にどのような貢献ができるか、ということ」を提案した。

Edelmanは研究と理論を通して人間の行為を認め、活動を通して環境と交流する進化的結果を賞賛する科学的視点を述べている。

生物学的なものを抽象的な人間の下位システムに統合する作業科学はわれわれが発展させねらばならない。

この章を読んだ感想

  • 心身二元論のように人間を分けることは難しい。包括的な視点でみることが必要。
  • 科学の発展に際しては心身二元論も重要な視点ではあるが人間全体を捉えるためには包括的な科学も必要。
  • 神経細胞集団選択論にも人間が活動することで環境に関わり相互作用で変化する視点がある。
  • 活動によって脳の発達が促され変化が起こり、概念、価値観を作り上げる。→作業的存在としての人間

臨床で応用するには※個人の考え

クライエントを包括的な視点としては「生活行為向上マネジメント、人間作業モデル、OTIPM、カナダモデルなど」理論を用いることで捕らえやすくなる。

理論はクライエントの作業遂行に必要な情報を包括的に収集できるようになっている。

人・作業・環境モデルにあるように、人が活動することで環境に関わる視点がある。環境要因が変化することで作業遂行ができるようになる・できなくなる場合がある。

福祉用具や家族・支援者、作業を用いての教育での行動変容など様々な環境を用いて作業遂行をできるようにしていく。

脳内の変化を作業を通して行い、作業遂行を行えるようにしていく。

まとめ

「作業科学 作業的存在としての人間の研究」より「15脳、心、意味」Ruth Zemke著の重要と思われる部分を抜き出しまとめました。

僕が感じ取った重要な点としては以下の通りです。

  • 作業療法士は包括的な視点でクライエントを見る必要がある
  • 心身二元論・包括的視点どちらの視点も必要
  • 神経細胞集団選択理論では活動・環境の相互作用によって人間の脳内が常に変化していることを示している

クライエントの一部を見るのではなく、包括的な視点で捉えて、活動・環境と関わることで人間の行動が変化していくことを重要視していたのではと思います。

詳しい本文に関しては「作業科学 作業的存在としての人間の研究」を参考にしてください。

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